マルチカルチャーと伝承バラッド

(カッコ内はチャイルド番号):

映画

1 “Gude Wallace” (157) に登場するウィリアム・ウォレスを扱った映画にメル・ギブソン主演・監督の映画 Braveheart (1995) がある。(N. M.)

2(櫻井雅人氏より)

ロビン・フッド 物語はたくさんの映画が作られましたが、多くは散文の物語を参考にしていて、バラッドを映画化したものではないようです。バラッドを下敷きにした映画はあ まりみかけません(映画にするには話が短すぎるのか、映像化しにくいのか、理由はわかりませんが)。見ていませんが Tam Lin (1970) という作品があります。"Based on the ancient Scottish ballad 'Tam Lin' (one of its many titles), the plot concerns an aging, beautiful woman (Ava Gardner) who uses her wealth (and occasionally, witchcraft) to control a decadent pack of attractive young people she surrounds herself with. But when her latest young stud (Ian McShane) falls for the local vicar's daughter (Stephanie Beacham), she vows revenge." (The Internet Movie Database) というもので、バラッドそのままの筋ではありません。演劇作品もあります(1)。 アメリカのバラッドに基づく映画はいくつかあるかもしれません。「音と映像からのバラッド(2), (3)」でご紹介したものとしましては "Frankie & Johnny" [Laws I3], "Casey Jones" [Laws G1] があります。ほかには Kingston Trio の "Tom Dooley" の大ヒットに「便乗」した映画 The Legend of Tom Dooley (「拳銃に泣くトム・ドーリー」1959)など。バラッドの映画化というよりは、バラッドやその他の伝承をヒントにして新たな筋を構成しています。オーストラリアを舞台にした映画『ネッド・ケリー/太陽の果てに青春を(Ned Kelly)』 (1970)はいくつかのエピソードがバラッドの "Ned Kelly" と共通しているようです(ずいぶんと昔に見たので記憶がうすれています)。また、バラッドを挿入した映画もあまり多くないようです。ただし、 "Barbara Allen" はしばしば使われていて、これも The Internet Movie Database によりますと、The Bachelor (1999), A Love Song for Bobby Long (2004), Picturesque Massachusetts (1942), Robin Hood Daffy (1958), Scrooge (1951), Songcatcher (2000) が挙げられています。

挿絵入りバラッド集(2)は多いので、これらを「絵画」に含めればたくさんありますが、独立した絵画作品となると少ないでしょう。Tam Lin Balladry (http://www.tam-lin.org/ ) の "Artwork and Images" のところにはいくつか紹介されています。アメリカのバラッドでは Thomas Hart Benton の“The Social History of the State of Missouri” (1936) という連作壁画に "Jesse James," "Frankie and Johnny" などが描かれています。

(1) TAM LIN - A Halloween tale of Magic & Seduction

(2) たとえば、Arthur Rackham の Some British Ballads (1919) (リンク集参照)。

戯曲

1 スコットランドの詩人・小説家・劇作家George Mackay Brown(1921-96)の戯曲The Sea-King’s Daughter (1991)は、“Sir Patrick Spens” (58)における遭難をノルウエーの側から演劇化したものである。(M. Y.)

絵画

1 “Queen Eleanor’s Confession” (156) で言及されるロザモンドの伝説を題材にした絵画にJohn William Waterhouse(1849-1917) の Fair Rosamond (1917) がある。(N. M.)

2 ラファエロ前派の画家Sir Joseph Noel Paton (1821-1901)の作品に “Thomas Rymer” (37)を題材としたLa Belle Dame Sans Merci (The Story of Thomas Rhymer) (1851)がある。 (M. Y.)

小説

1 ジェイムズ・ジョイスの小説 Ulyssesには “Sir Hugh and the Jew’s Daughter”(155) が引用されている。(N. M.)

2 エレン・カシュナー (Ellen Kushner)作 Thomas the Rhymer [1990; 井辻朱美訳『吟遊詩人トーマス』早川書房、1992年]は、“Thomas Rymer” (37)でうたわれるトマス伝説を小説化したもの。(M. Y.)

3 H.G. WellsのThe Time Machine (1895)(Penguin Classics)のSection 8に下記のような文章があります。
"And so, in that derelict museum, upon the thick soft carpeting of dust, to Weena’s huge delight, I solemnly performed a king of composite dance, whistling –The Land of the Leal- as cheerfully as I could."(p.68)
ペンギンの注によれば、"The Land of the Leal"はa Scots balladだそうです。(T. T.)

"The Land of the Leal"はLady Carolina Nairne of Perthshire, Scotland (1766-1845)が作ったもののようですね。下記のyoutubeには歌詞も紹介されています。
http://www.youtube.com/watch?v=aleyPzq_I8c (M. Y.)

詩(バラッド詩以外)

1 ワーズワースは“The Rising in the North”(175) の影響を受けて物語詩 “The White Doe of Rylstone”を書いた。(N. M.)

2 スコットの物語詩「マーミオン」に挿入されたバラッド詩 “Young Lochinvar”の元歌になったのは “Katharine Jaffray”(221)。(N. M.)

3 S. T. Coleridgeは“Dejection: An Ode” (1802)の冒頭に“Sir Patrick Spens” (58)の一節(新月が旧月を腕に抱いているという不吉な予感を船乗りが口にする場面)を引用して、自らの想像力の枯渇への不安を見事に表現してゆく。 (M. Y.)