“We shall overcome”  山中光義

 コロナ太り対策のテレビ体操が色々とありますが、わたしは定年後15年近くにわたって朝のNHKラジオ(テレビ)体操を欠かさずやってきました。インストラクターの指導に従って体を動かすのですが、「・・・すると・・・を深く曲げられることができます」といった日本語が気にかかってしょうがないことがよくあります(「曲げることができます」ではないだろうか?・・・云々)。
 翻訳作業をやっておりますと、テレビやラジオや人様の日本語が気にかかるという悪しき(?)習性が身につきました。『全訳チャイルド・バラッド』の刊行後、同じメンバーで「バラッド詩」の翻訳作業を始めました。『英国バラッド詩アーカイブ』(https://literaryballadarchive.com/ja/)に収録している、18世紀から20世紀にわたる141名の詩人の作品748篇のすべてに日本語訳を付けようという企画です(桝井幹生先生には特別参加で、キプリングの全32作品の翻訳を完了していただきました。深く感謝する次第です)。『全訳』には6年の年月を要しましたが、続いて始めた「バラッド詩」の翻訳作業も既に15年近くが経って、現在150篇を訳出している段階です。毎月一回集まって150行程度の訳原稿を検討しあった上で仕上げるという手順ですが、今はオンラインの形をとっています。現役のメンバーが主力で、各人の仕事の合間をぬっての会合はなかなか進みません。単純計算で、残る600篇を仕上げるには60年を要することになりましょうか。[例会の名称は、「全訳」の時はSBS (SLOW BUT STEADY)、今はVSBS (VERY SLOW BUT STEADY)]
 その間には間違い無くわたしはあの世からの参加になりましょうし、いや、ほかのメンバーも全員揃ってあの世でしょうが、ある者は天国、ある者は地獄、ある者は煉獄、はたまた、ある者は妖精の国、とそれぞれの居場所がバラバラでしょうから、オンライン検討会は必須の条件となるはずです。
 このような計算をすると、止めてしまおうとする方が普通かもしれませんが、このメンバーには誰一人そのような未来は念頭に無いようで、毎月の予定表を淡々とこなしてゆきます。『全訳』から数えて既に20年以上が継続しているということに対するこの 無自覚(いや、楽観主義)こそ、困難を乗り越える秘訣であると信じるメンバーの愛唱歌 “We shall overcome”をお聴きください。コロナ克服の願いも込めて!(ジョーン・バエズが2010年2月9日ホワイトハウスで、当時の合衆国オバマ大統領を前にうたった時の動画でどうぞ。)