日本バラッド協会第11回(2019)会合のご案内

開催日:2019年3月23日(土) 
場 所:立命館大学いばらきキャンパス 
立命館いばらきフューチャープラザ B棟1階 イベントホール1 

キャンパスMAP E1

[アクセス] http://www.ritsumei.ac.jp/accessmap/oic/
[フロアガイド] http://www.ritsumei.ac.jp/file.jsp?id=229844&f=.pdf
時 間:会合 13:00-17:00 懇親会 18:00-20:00(予定)
共 催:ヴァナキュラー研究会

<プログラム>
総合司会 鎌田明子

13:00-13:05 開催校挨拶 ウェルズ恵子   事務局報告 中島久代

13:05-14:05 講演 マリエッカ・ゴレジ・カウチチ博士(スロベニア人文科学研究所、民族音楽学センター)
「スロベニアのバラッド、伝統と現代文化 — 文学・音楽の変遷とナショナル・アイデンティティ」

14:15-14:40 研究発表 中谷可惟
「音のことばから書きことばへ — マイルス・デイヴィスのKind of Blue批評研究」

14:40-14:55 ティーブレイク

14:55-15:35 レクチャー&実演 山田 良
「日本の口承民謡 — レクチャーと三味線の生演奏 —」

15:45-16:05 トーク「わたしとバラッド」 石井啓子
「昔話を語る ― お話を聞くのは楽しい ―」(奈良市の昔話)

16:15 -17:00 ライブ やぎたこ(柳澤昌英 & 辻井貴子)
「古きよきアメリカンフォーク&トラッド」

17:00 閉会

懇親会
場所:「鼓(つづみ)」JR茨木駅西口徒歩2分(tel. 072-621-2333)
https://tabelog.com/osaka/A2706/A270604/27007165/
時間:18:00-20:00(予定)
会費:5000円

 

<講演>
スロベニアのバラッド、伝統と現代文化 —文学・音楽の変遷とナショナル・アイデンティティ—  
           マリエッカ・ゴレジ・カウチチ(スロベニア人文科学研究所、民族音楽学センター)

中央ヨーロッパに位置し、イタリア、オーストリア、ハンガリー、クロアチアと国境を接するスロベニアが独立したのは1991年。国としての歴史は浅いものの、スロベニア人という民族の歴史は、物語歌であるバラッドに刻まれており、スロベニア人にとってバラッドはまさに民族の歴史を伝える遺産である。この講演では、スロベニアのことを知らない人にもわかりやすいよう、まずは国や民族、そしてその歴史についてスライドで紹介する。その後、スロベニアのバラッド蒐集の歴史、代表的なバラッドについて、各バラッドにまつわる逸話や伝説、他の国や文化のバラッドとの相違点などについて、音楽の視聴を交えながら話をしたあと、現代においてバラッドがどのような変容をし、文化的にどのように反映されているかについて見ていきたい。

<研究発表>
音のことばから書きことばへ — マイルス・デイヴィスのKind of Blue批評研究  中谷可惟

歌詞のない器楽音楽について語ろうとする時、音楽評論家は最も自由な創造性を発揮するのではないだろうか。マイルス・デイヴィスの1959年のアルバムKind of Blueは、今では「最も有名でよく売れたジャズの名盤」として語られるが、もちろん発表当初からそのように評価されていたわけではない。「傑作」という定評がついてカノン(古典)の地位に行き着くまでに、半世紀にわたって批評史をくぐり抜け、賞賛から苛評まであらゆる言説にさらされてきた。アメリカでは1980年代までに、「ジャズの歴史叙述」という文筆活動がこのアルバムをカノンとして定着させたが、それは音楽そのものの美的価値を語るのではなく、ジャズ史上の歴史的価値を説明するという冷静な批評であった。アルバムについて語った批評家らは、この抽象的な器楽音楽の「すぐれたところ・まずいところ」を文章で書き著わす文筆のプロでありながら、同時に楽音の世界に浸って生きる音楽愛好家でもあった。本発表は、いわば楽音の言語を文字に「翻訳する」という難題に挑んだ彼らの、様々な創造的戦略を明らかにする。

<レクチャー&実演> 
東北「語りもの」民謡と津軽三味線―〈呪術〉としての言葉遊びが紡ぐ物語世界  山田 良


東北地方は日本民謡の宝庫であると共に、民間信仰と濃厚な関わりを持つ口承の芸能・風習を生み出したエリアでもある。今回は、東北民謡の「語りもの」唄について、他地域と比べて特徴的な「言葉遊び」に注目、掛け言葉や駄洒落等によって、ストーリーが時空の制限や語り手/登場人物の垣根を超えて自由に「浮遊・溶解」し始める様子を、実演を交えて紹介する。そして、このようなストーリーの浮遊・溶解を可能にする一要因として、「イタコの口寄せ」をはじめとする言葉の呪術や、様々な門付芸の影響を仮説として提示する。さらに、東北民謡に不可欠な伴奏楽器としての三味線(津軽三味線)の役割にも言及し、人々の生活を「言葉と音の呪術」で寿ぐ役割を担ったのが漂泊の盲目芸能者であったことにも言及したい。

<トーク「わたしとバラッド」要旨>
昔話を語る―お話を聞くのは楽しい―  石井 啓子

昔話というのは口で語られ耳で聞かれてきたものです。この点ではバラッドと通じるものがあるように思います。今では子どもたちが祖父母から毎晩のようにお話を聞くということはなくなってしまいました。けれども長い間伝承されてきた昔話を子どもたちの耳に音として届けたいという思いから私は書かれたものを覚えて子どもたちに語るという活動をしています。グリムや昔話の研究者小澤俊夫さんが全国で開催しておられる「昔ばなし大学」を受講し昔話の語り口(文章、文体)を学んだりもしています。小澤先生は「昔話は必ずその土地の言葉で伝承されてきたので自分にとって一番語りやすい言葉である日常語で語るのがいい」と言われます。私は今奈良在住ですが生まれも育ちも大阪で夫の仕事で東京、ニューヨークに住んだこともありいろいろ混ざっていると思いますが、私の日常語で奈良の昔話を三つ語りたいと思います。
今の奈良市の昔話「良弁杉」4.5分「十三鐘の石子詰め」4分、「井戸のこわい仁王さん」6.5分は奈良県御所市の昔話です。

<ライブプログラム>
「古きよきアメリカンフォーク&トラッド」  やぎたこ(柳澤昌英 & 辻井貴子)

全国を回る旅の歌うたい『やなぎ』と神奈川在住『辻井貴子』によるアコースティック・デュオ。18世紀より受け継がれ、現在に至る古きよきアメリカンフォーク&トラッドが主なレパートリーです。それぞれの歌の時代背景や内容の説明をしながら、いろいろな楽器(フィドル、バンジョー、マウンテンダルシマー、オートハープ等)で演奏する、という活動を全国で行っています。アメリカン・ミュージックのルーツでもあるバラッドにも大変興味があり勉強中です。アパラチア山脈に残っていた歌や、そこで生まれた楽器の紹介などもできればと思っています。当時の再現というわけではない、私たちなりのアレンジではありますが、チャイルドバラッド集に収録されている曲も交えてお聴かせします。
◆予定曲目
The Devil’s Nine Questions(Child No.1)
The Wind and Rain(Two Sisters)(Child No.5)
Barbara Allen(Child No.41)
The Cuckoo Bird
I Wish My Baby was Born
The Wayfaring Stranger