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連載エッセイ “We shall overcome” (12)
All Things Are Quite Silent かんのみすず 2020-12-27
2020年が静かに、でも大きな変化とともに過ぎようとしています。
札幌はクリスマスイブに降った雪で街は真っ白。おまけに寒いのでとても静かです。
アラジンストーブの上にのせたやかんの音だけが部屋に響いています。
こうして久しぶりに文章を書いているといろいろなことが頭をよぎります。
この一年、仕事的にも音楽的にもいつもとは明らかに違う年でした。
そんな中、繰り返し思い出されたのは、去年のイギリス旅行のこと。
ハプニングだらけの旅行だったので最初はそのことばかりが思い出されたのですが、時間が経つにつれ思い出されるものが変わりました。
それは「景色」。思い出されるというより見えるに近い感触でその場の空気も連れてきます。
列車から見えた駅舎、エジンバラの急な坂と石畳、そして鳩のいた海の見える丘。
ConwayのB&Bの部屋の窓から見えた景色とお城。
荘厳なキングズクロス駅、ロンドンのホテルの部屋、1階のパブ、散歩した道。リス。
そして頭に浮かんだ言葉はAll Things Are Quite Silent。
greyish glowを始めた頃からレパートリーとして歌ってきた曲の題名です。
今年最後の練習でもこの曲を歌いました。派手さはないけれど美しく悲しげな旋律を持つ曲。
長く古い歌を歌っているとこんなふうに思うことがあります。
歌い続けてきた普通の人々(民衆)のこと。
普通の人々は長い歴史の中でさまざまな辛い経験やどうしようもない想いを歌に乗せて(もちろん戦う民衆もいたけれど)静かに淡々と生き抜いてきた。
歌うことで時には強くなり、時には心を癒し、時には辛い日々を過ごすために歌った。
もちろん楽しい時にも歌ったり踊ったりしたけれど。
人は弱いと同時に案外強い。特に普通の人々(民衆)は強かったのではないかと。
まだしばらくの間、いつもどおりの暮らしができない日もあって、そんな日々に気持ちが慣れないこともあるのだと思います。以前と暮らしが変わることや大きな変化があるかもしれない。
でもAll Things Are Quite Silent。すべてのものはQuite Silentなのだと。
私がPentangleでバラッドに出会ったように、日々人や物いろいろなものに出会う。
それは時には大きく、時には小さく変化をもたらす。その変化ができればいいものでありますように。そして来年がそういういい出会いの年であることを祈って。
さて年明けには「Auld Lang Syne」を歌いましょうか。
早く人前で自由に歌える日が来ることを祈って。たくさんの人と近くで話せる日を祈って。
All Things Are Quite Silent / greyish glow
(2月に録音した出来立てホヤホヤの練習音源です。空調(排気システム)の音や音程のズレ等々はご容赦ください。編集なし、マイクあり(リバーブ無し)の一発録音です。)