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ペンタングルとバラッドとの出逢い 広岡祐一-(2011/6)
あの日本のフォーク・ソング・ブームの真只中でギターを手にした後の1970年頃に一枚のレコードに出逢いました。白い背景に黒色の5人のシルエットが浮かび上がったLP ジャケットの「THE PENTANGLE」の1St アルバムに!
それまで日本やアメリカのPPM、ブラザース・フォア等のフォーク・ソングを聴いていた僕にはアメリカと英国の音楽性の違いなんて関心もなく、またわからなかったのですが、生まれて初めて聴くこの英国出身のペンタングルが醸し出す音楽はそれまで聴いていた音楽とは明らかに異なる何かただならぬ空気を感じました。
最初はその各メンバーの個々の卓越した高いレベルと今まで聴いたことのない個性的な楽器の演奏技術に衝撃を受け、そして彼らが唄う曲にはどこか馴染みがあり、郷愁さえも感じる旋律に不思議な感覚を覚えました。
これが僕のペンタングル、そしてブリティッシュ・フォーク…トラッド/バラッドとの出逢いでした。
世の中にこんな音楽があったのか!?と興奮してから40年以上が経ちましたが、僕の浅い知識や英語等の語学力がないためバラッドのあの独特の物語を持つ歌詞についてはまだまだ勉強不足だったのですが幸運にも「日本バラッド協会」に出逢いました。
僕はアコースティック・ギタリストとして生活をしていますので、やはりバラッド・チューンの持つ音楽的な面、演奏面には大きな関心を持っています。英国では トラディショナル・バラッドは伝統的に無伴奏で唄う・・・が正当だと叫ばれていた時期もあったようですが、これはこの音楽が生まれたであろう当時の古い音階である“モード”の旋律で唄われていたのが、今は現在の長調、短調で歌われている…、それが眉をひそめる理由なのかもわかりません。それにバラッドはあくまでもその歌詞が重要なのだ、との思いを持った人も多いからだと思います。
僕個人的には伝承バラッドは長い年月の間を口承で伝えられていくうちに時代とともに変化…旋律や歌詞も…は起きて来たと思っているので(歌詞を意図的な書き換えや加筆しているバラッド・シンガーもいると聞きまし た)、演奏形態がロックやジャズ、ポピュラー的に聴こえるのには抵抗はありません(もちろん限度はあると思いますが)。それに古から伝わっているこの音楽 は、今のこの時代においても歌い継がれ、人々に伝承され生き続けているすばらしい音楽だと思っています。
と随分とえらそうに書いてしまいました。ペンタングルではバート・ヤンシュ、ジョン・レンボーンそしてこの二人に影響を与えたディヴィ・グレアムのギターの演奏技術面を研究(この表現は 大袈裟ですが)…いや追求していましたが、これからはもっとこのバラッドの歌詞、旋律などについても知識を増やして、また歴史的なバックグランドもこの協 会で勉強していきたいと考えています。