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日本バラッド協会第8回(2016)会合のご案内
日程: 2016年3月26日(土)
場所: 立命館大学 衣笠キャンパス 恒心館
講演 川畑 彰
「詩人の務め・役割について ― G.M.ブラウンに関わる証言から ―」
協会通信100号記念企画「みんなで語ろう わたしとバラッド」
語り手: 林 邦彦 聞き手: 中島久代
「フェロー諸島のバラッドに歌われたアーサー王物語」
語り手: David Chandler 聞き手: 水野 薫
「Edward J. Loder作 Raymond and Agnesとロマン派的バラッド・オペラ」
語り手: 小路 滋 聞き手: 丸田信一
「バラード、いやバラッドです。」
かんのみすず 「わたしとバラッド」 聞き手・進行: 石嶺麻紀
かんのみすず 「バラッドを歌う」
〜小さなライアーと無伴奏シンギングで綴るバラッドの世界〜
講演 概要
川畑 彰 「詩人の務め・役割について ― G.M.ブラウンに関わる証言から ―」
スコットランド・オークニー出身のGeorge Mackay Brown(1921-1996)は生涯50篇以上の詩、物語、エッセイ集を出版しました。詩人(‘makar’)が過大に評価され、特別視されることを好まず、詩作は例えば大工職人の物づくりと変わらないと考えたブラウンは、無論多少の不調期があったものの、「今日はその気分ではない」などと言わず(俗に職人気質というものもありますが)、実に多くの詩を日々創造し、かつ修正しました。同時に詩人は創作の根源や方法としての‛silence’の追求者でもありました。
作家は第一に身辺の事情や作品を書くことを生業としますが、一方で知人(概ね寡黙とはいえ詩神を含む)、読者、批評家などによって種々書かれる対象でもあります。本講の副題の証言は、表現主体の「詩人」「私人」によるものと、他者によって書かれるものを含みますが、これらの証言によって照らし出される生身の詩人ブラウンと、詩人が作品内で表現する詩人の務め、任務はどのように関連するのか。この主題に生地オークニー諸島の歴史・風土がどのように関与するのか。当面、筆者は詩人が置かれた様々な収束的ではなく分岐的、対立的な状況が、詩人に形式や方法に極めて意識的な (つまりは文学性の高い)作品の創造を促したのではないかと推測しています。
「わたしとバラッド」概要
(1) 林 邦彦 「フェロー諸島のバラッドに歌われたアーサー王物語」
デンマーク自治領のフェロー諸島で使用されているフェロー語では数多くのバラッドが伝承されているが、その中に、アーサー王伝説に題材を取った『ヘリントの息子ウィヴィント』と呼ばれる作品がある。報告者はかねてより、アーサー王伝説に題材を取ったアイスランド語による文学作品に関心を持ち続けてきたが、数年前より、アイスランド語と近い関係にあるフェロー語によるバラッドの中で、アーサー王伝説に題材を取った上記の作品に特に強い関心を持って取り組んでおり、今回は、フェロー諸島やフェロー語に関する基本的な事柄を御紹介した後、フェロー諸島でバラッドが数世紀に亘る口承による伝承の後に採録されるに至った経緯、フェロー語バラッド作品群の物語内容、特徴的な表現形式、アーサー王物語の生成から北欧語圏への伝播の過程、アーサー王伝説に題材を取った上記のフェロー語バラッド作品の伝承状態と内容などについて御紹介申し上げたい。
(2) David Chandler
「Edward J. Loder作 Raymond and Agnes と ロマン派的バラッド・オペラ」
OED によれば、バラッドの原意は「素朴な歌」である。「よく知られた話を小さなスタンザにのせて語る詩」がバラッド定義に加えられた後も、バラッドと音楽は密接な関係を保つ。The Beggar’s Opera (1728) によって樹立された英国「バラッド・オペラ」の基礎は、この素朴な節歌概念である。さらに「バラッド・オペラ」に、よりゆったりとした情緒も加えられるようになる。この「素朴な歌」と「…小さなスタンザにのせて語る詩」が結びつく中、バラッドとオペラが繋がり、時に、バラッドの語りがオペラの様相を呈するようになっていく。Edward J. Loder作のRaymond and Agnes (1855) が良い例で、遠い昔を語るバラッド形式にオペラの息づかいが聞こえる作品である。今回、19世紀中期の如何なるイギリス・オペラよりもバラッド味を生かした、Raymond and Agnes再収録の企画が進行中である。
(3) 小路 滋 「バラード、いやバラッドです。」
第8回会合で何か話をして欲しいとのご連絡をいただいて“どうして私が?”といささか面食らったのですが、どうやら中盤の息抜きのための話題提供という趣旨だとわかり、それなら研究者ならぬ自分が直接見聞きしてきたことの一端をご紹介するということで役を務めることができるのかなあ、とあまり慎重に考えることもなくお引き受けすることにしたのです。
私の英国音楽への邂逅は高校時代にリアルタイムで経験したビートルズブームであることは間違いありません。さらにそれから数年後に同級生の家でたまたま聴いたペンタングルの音楽が、その後飽くことなく今に続くフォークバラッドへの興味に導いてくれたのです。
あまり昔の思い出から始めると時間がいくらあっても足りませんので、今回はここ数年の間に参加したコンサートや音楽フェスの写真や音源を用いながらお話したいと考えています。
かんのみすず 「わたしとバラッド」
自己紹介、バラッドとの出会い、バラッド協会との出会い、企画コンサート ― バラッドを歌う ― について、バラッドシンギング、私とバラッド、楽器(小さなライアー)について、今日の演奏、今後の活動、などについて自由に語りたいと思います。
かんのみすず 「バラッドを歌う」(予定曲)
〜小さなライアーと無伴奏シンギングで綴るバラッドの世界〜
Blacksmith (2種)
Nottamun Town
Scarborough Fair
Bonny Green Osiero / The Cruel Mother
Twa Corbies
Comfort and Joy
その他