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日本バラッド協会第10回(2018)会合

開催日: 2018年3月24日(土)
場 所: 愛知学院大学 名城公園キャンパス

講演  圓月勝博
「遅れてきた青年のバラッド — 暗い時代の人々を歌う W・H・オーデン」
研究発表  ウェルズ恵子
「説経節『山椒太夫』の広がりと変遷:声、舞台、活字、映像」
トーク 「私とバラッド」
1 島崎寛子「県人会にみる文化の伝承:アメリカの戦前と戦後」 
2 山崎 遼「アバディーンレポート」
ライブ いがりまさし
「リコーダーでアプローチする伝承音楽」

<講演要旨>
圓月勝博 「遅れてきた青年のバラッド ― 暗い時代の人々を歌う W・H・オーデン」    
 大江健三郎の『遅れてきた青年』(1962年)のエピグラフに名前が登場することでも知られるW・H・オーデン(1907-73年)のバラッドを取り上げて、この文学ジャンルが 20世紀文学において果たした役割について、あらためて考えてみたい。オーデンの親友でもあったハンナ・アーレント(1906-75年)は、『暗い時代の人々』(1968年)の中で、オーデンをベルトルト・ブレヒト(1895-1956年)とともに「遅れてきた者」として規定し、バラッドのような過去のジャンルを自由自在に再生する能力の中に両者の共通点を見た。18 世紀イギリスの文人ジョン・ゲイ(1685-1732年)のバラッド・オペラ『乞食オペラ』(1728)を翻案したブレヒトの代表作『三文オペラ』(1928)を私たちに思い出させてくれるアーレントの評言は、オーデンのバラッドに関する洞察も与えてくれるであろう。オーデンのバラッドを読みながら、時代に取り残されたかのように見える文学の現代性を探ることが本講演の目的である。

<研究発表要旨>
ウェルズ恵子 「説経節「山椒太夫」の広がりと変遷:声、舞台、活字、映像」     
 説経節(民間仏教歌物語)の「山椒大夫」は、森鴎外の短編「安寿と厨子王」の原作として知られる。安寿が壮絶な苦難の末に神格化したことを、節つきの語りで説く本地物語である。14世紀が始まりといわれ、各地に儀礼/芸能化した異種がある。本発表では、唱導語り(説経節、瞽女歌、祭文)、人形浄瑠璃、歌舞伎、小説、児童書、映画と多様に展開してきた約700年間の伝統を大まかにたどる。そして〈語り歌の関心が神 仏から人間へ移った〉ことと〈人間中心になると語りの声の数が増える〉という二つの変化、および〈物語は暴力への解決策を示そうとする〉という不変の一点を明らかにする。関連した議論のテーマには3点ある。西欧の口頭伝承を基礎とする物語展開との類似の指摘、本作が歌物語だったことが作品の命の長さと変化の幅の広さに影響していること、現在「山椒大夫」が人々の興味をひかない理由に、〈奇跡〉の要素をほぼ捨てた明治以降の物語展開があること、である。

<トーク「わたしとバラッド」 要旨>
トーク 1 「県人会にみる文化の伝承:アメリカの戦前と戦後」 島崎 寛子
 北米への日本人移住が開始された19世紀末から、各出身県による県人会が結成された。異郷での県人会は同郷人と親睦を図り、相互扶助的な役割を果たし、ネットワーキングとコミュニティの重要な機関となった。県人会は教育や文化活動の面でも大きな役割を果たした。ラジオやテレビがない時代に新年会、祭りや盆踊りを行い、日本人としてのアイデンティティを確認し、詩吟、民謡や踊りなどの文化継承の役割を担った。県人会は、日米関係の悪化による太平洋戦争勃発で活動が中止された。戦後活動が再開されたが、 二世や三世などが増加し、かつての日系コミュニティが衰退する中で、文化継承が課題となっている。しかし、歌謡大会、盆踊り大会などは、形を変えることにより、世代間での触れ合い交流も増え、新しい展開を遂げている。移民の子弟県費留学制度などで、若い日系人たちには日本滞在の機会が増え、アイデンティティを考え、文化継承について模索する良い機会となっている。トークでは、どのような祭り、盆踊り、詩吟、 民謡などが継承されてきたかを紹介する。

トーク 2 「アバディーン・レポート」  山崎 遼
 2016 年 9 月から 2017 年 9 月にかけて、立命館大学での博士課程を休学し、英国スコットランドのアバディーン大学エルフィンストーン研究所へ学位留学を行った(修士・民俗学)。今回の発表では留学先での勉学および生活を紹介し、一年間の留学を総括する。
 勉学に関しては、研究所の課程に沿って現地での学びを振り返る。研究所の修士課程は三学期編成であり、一学期は民俗学の歴史を学びつつ、現在用いられている理論・方法論を学んだ。二学期は主にスコットランド民俗学および口頭伝承研究の事例研究に触れ、三学期はこれまでに身につけた全ての知識と経験を踏まえた上で自らの研究テーマを追究した。
 また、日々の生活や課外活動を通して経験した、アバディーンという街での暮らしも紹介する。シェアフラットやスーパーマーケットでのカルチャーショックなど、些細なことでありながらも異国にいることを実感させられた出来事を通して、自らの目で見たスコットランドという国、アバディーンという街、そしてその地での生活を振り返る。

<ライブプログラム>
リコーダーでアプローチする伝承音楽     いがりまさし
 アイルランドやグレートブリテン島、あるいは北欧諸国や沖縄など、伝承音楽が今も息づいている地域のメロディーを中心に、リコーダーとその改良型であるリケーナを使って演奏します。また、日本の自然の美しい映像とこれらの旋律とのコラボも合わせてご覧いただく予定です。
◆予定曲目(仮)
Butterfly [Irish Traditional ]
Planxty Irwin [作曲 Turlough O’Carolan]
Captain O’Kane [作曲 Turlough O’Carolan]
アンドレアス・ロングの結婚行進曲(Brudmarsch efter Andreas Lang [Swedish Traditional]
てぃんさぐぬ花 [Okinawan Traditional]
Unnamed Melody (名もなき旋律) [作曲 Yoji Suzuki]
Korsbarstrad Vals (桜の樹の下で) [作曲 Marinekko]
Indian Summer(かりそめの夏 ) [作曲 Jack M. Skyfield]