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ちょっと気になる歌

(洛北通信平成26年5月14日号より転載) 桝井幹生

 今年も大型連休の狂想曲も終わりました。その中のメイン「子どもの日」も終わりました。我が家の氏神様の祭礼も同じ日でした。昔私もしも座に入り、神輿を先導する囃子方の一人として、裃姿で鉦を「コンチキチン」と鳴らしながら町内を練り歩きました。鉦も調子を合わせるのが大変なんですよ。数日間の練習で、短い象牙のバチで叩くものですから、痛いわ、タコができるわ、で往生したもんです。その鉦の音と同じような擬音のリフレインのあるアメリカのわらべ歌を紹介しましょう。連休疲れのリハビリにどうぞ。  
 「キン コン キチ キチ カイ ミー オウ」のリフレインを冠したこの唄の正式名は「カエルどんが、嫁取りにでかけた」( Frog Went A Courting)です。それでは、チャビー・パーカーが歌っている歌詞をあげ、右に訳もつけましょう。これで歌えるかも。
1. Frog went a courting and he did ride   カエルどん 嫁さん探しにハイシードー
 King kong kitichie kitchie ki-me-o     キン コン キチ キチ カイ ミー オウ
 With a sword and pistol by his side    ダンビラ短銃たばさんで
 King kong kitichie kitchie ki-me-o    キン コン キチ キチ カイ ミー オウ
 Chorus                 繰り返し
 Ki-mo-ki-mo-ki-mo-ki         カイ モウ、キー モウ カイ モウ キー
 Way down yonder in a hollow tree    はるか向こうの木のうろに
 An owl and a bat and a bumblebee    フクロウ、コウモリ、クマンバチ
 King kong kitichie kitchie ki-me-o キン コン キチ キチ カイ ミー オウ

2. He rode ‘til he came to Miss mouse’s door  二十日ねずみの家に着き
 And there he knelt upon the floor      床にべったりひざまずき
 Chorus                 繰り返し

3. He took Miss Mouse upon his knee       二十日ねずみを膝にあげ
 And he said, “Little mouse will you marry me?” 「マウスちゃん オレと結婚してく んない」

4. Miss Mouse had suitors three or four    ねずみ嬢には求婚者が3,4人
 And there they came right in the door    お嬢の門前で鉢合わせ

5. They grabbed Mister Frog and began to fight  カエルどんを掴まえ取っ組み合い   
 In that hollow tree ‘twas a terrible night    その夜は てんやわんやの大騒ぎ

6. Mister Frog hurled the suitors to the floor    カエルどん 敵をばつぎつぎ投げ飛ばし  
 With his sword and his pistol he killed all four  剣と短銃で 全部やっつけた

7. They went to the park on the very next day   つぎの朝 二人はめでたく式をあげ
 And left on their honeymoon right away    即ハネムーンへと旅立った

8. Now they live far off in a hollow tree        この夫婦いまじゃ 楽しい我が家で
 Where they now have wealth and children three  一姫二太郎に恵まれたとさ  

 なんとも他愛のない童謡風バラッドですね。一応ここらでチャビー・パーカーの唄を聴いてみましょう。1928年録音のコロンビアの78回転のSPレコードがYou Tubeにありました。下をクリックしてください。 http://www.youtube.com/watch?v=m7NBD40v5sE  
 鼻にかかったブルーグラス独特の唱法ですね。とくに盛り上げることもなく、淡々と唄っています。それにしてもキン コン キチ キチ カイ ミー オウというリフレインがおかしいですね。他にも沢山のヴァリアントがあります。中には「アッハン」というのもあります。でも、このリフレインはチャビー・パーカーが元祖みたいです。ハーンが書いたとされているコマーシャル紙の記事「大衆の音楽」(1877.10.21)で、ハーンはこのようなリフレインは、「楽器の音を真似た擬音」ではないかと言っています。このような古い童謡はシンシナティでも歌われており、耳にしたことがあるのでしょうが、ハーンはこの唄を挙げていません。パーカーのレコードにあるような口笛が嫌いだったのかもしれませんね。  
 コン コン チキチン コン チキチン(祇園囃子)  
 コン コン チキ(東京あたりのキツネの古語)  
 コン チキショー(この畜生!)  
 親ばかチャンリン(蕎麦屋の風鈴 見上げたもんだよ 屋根屋のふんどし)←お山コ三里、お山コ三里 (これは秋田民謡「お山コ節」の囃子)   
 実際に佐藤節子さんのSPレコードで聴いてもらいましょう。   
 http://www.youtube.com/watch?v=QgKPeA_z7W4  
 『コンチキ号漂流記』という本がありましたね。でもこれは南米の土俗神の名前でこのわらべ歌とは関係がないようです。
 このバラッドは、1549年にWedderburn の ‘Complaint of ScotlandにThe Frog Went to the Myl Durというタイトルで引用されているという説がありますからそうとう古いものです。  
 また一説に、これはアンジュー公フランソワがエリザベス一世に求婚した故事を風刺したものとも言っています。おおもとはスコットランド種であったようですね。The Hogarth Book of Scottish Nursery Rhymes by Norah & William Montgomerieに出ていますが、(#193p.137) 残念ながら付属のカセットには入っていないので聴けません。しかし、’気色の悪い声‘のEwan MacColl とキャンキャン声のPeggy Seeger(最近物故したピート・シーガーの妹)の夫婦が作ったThe Long HarvestというイギリスArgoのレコードの8枚目(Z)DA 73のVersion Aにマッコールの録音があります。Version Cはキンコンキチキチですが、ペギーはチャビー・パーカーのSPからと断っていますから、パクリではないでしょう。ただし口笛はありません。  
 なおチャビー・パーカーの録音は、アメリカFolkways社の6枚組LP Anthology of American Folk Music の一枚目8曲目にあります。なおこのLPは現在CDに復刻されているので入手しやすいと思います。50年、60年代のフォーク・リヴァイヴァル・ブームで、ジョウン・バエズとかボブ・ディランに影響を与えた音源だと言われています。Harry Smithが蒐集した膨大なSPレコードをLPに復刻(トランスファー)したものですが、録音技師にベラ・バルトークの息子のピーター・バルトークも名を連ねています。ピーターの起したバルトーク・レコードは、高音質でマニアの間では定評があります。  
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