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18-20世紀バラッド詩におけるモチーフと地域的関連性に関する基盤資料の作成と提供
18-20世紀バラッド詩におけるモチーフと地域的関連性に関する基盤資料の作成と提供
科研費採択研究課題の概要
(2026-2029年度学術研究助成基金助成金 基盤研究(C)(一般) 課題番号26K03758
研究代表者:鎌田明子 研究分担者:伊藤真紀、中島久代、橋本健広、三木菜緒美、宮原牧子)
本研究の目的は、18世紀から20世紀にかけてのイングランド・スコットランド・アイルランドのバラッド詩を対象とし、研究基盤となる資料群を構築・公開することである。
伝承バラッド研究においては、これまでにコンコーダンスやモチーフ・インデックスといった基礎資料が一定程度整備されてきた。一方で、伝承バラッドを模倣して成立した文学的バラッド詩については、作品数の多さにもかかわらず、体系的な基盤整備が十分に進んでおらず、包括的研究の遂行に制約が存在している。このような研究状況を踏まえ、本研究では「バラッド詩において、モチーフと時代・地域はいかなる関係性を持つのか」という問いを設定し、その解明に資する基盤資料の構築を目指す。
本研究において整備する基盤資料は、①コンコーダンス、②モチーフ・インデックス、③GIS地図の三種である。これらを相互に連関させることで、語彙分布、主題構造、地理的背景を統合的に把握し、従来の個別作品研究では把握困難であった広域的・通時的関係の分析を可能とする。

研究は以下の四段階により進める。第一に、既存の「The British Literary Ballads Archive(https://literaryballadarchive.com/)に収録された作品を研究用データとして再構築し、デジタル化を行う。第二に、当該データに基づきコンコーダンスを作成し、語彙の出現傾向を整理する。第三に、翻訳済み作品から抽出したモチーフを基盤として、AIを補助的に用いながら未翻訳作品への適用を試み、モチーフ・インデックスを構築する。第四に、作品中に現れる地名を抽出し、位置情報と結びつけてGIS上に可視化する。これらの工程を通じて、「モチーフ・時代・地域」の三要素を統合的に分析可能な研究環境を整備する。
本研究の独自性は、第一に、文学的バラッド詩を対象とした包括的基盤資料を体系的に整備する点にある。第二に、デジタル・ヒューマニティーズの手法を本格的に導入し、「モチーフ」と「場所」を接続することで、文化的連続性および作品間の関係性を可視化する点にある。
本研究の到達目標は、モチーフと地域、さらに時代との関係を体系的に整理・提示することにより、詩人間の文化的連関や文学的継承の構造を可視的に把握可能とする比較研究基盤を提供することである。
本研究の意義は、以下の三点に集約される。第一に、バラッド詩研究における基盤資料の整備を通じて、研究環境の高度化に寄与する点である。第二に、従来十分に評価されてこなかった作品群の再検討を促す点である。第三に、文学研究におけるデジタル・ヒューマニティーズ(GISおよびAI)の実践的応用モデルを提示する点である。これらにより、国際的にも共有可能なデータ基盤を構築し、今後のバラッド研究の展開に資することが期待される。
なお、AIの活用は情報整理の効率化に寄与する一方で、その出力結果の妥当性については慎重な検証が不可欠である。特に、公開データとしての信頼性を確保するためには、継続的に精査を行う必要がある。本研究では、構築した基盤を公開し、広く研究者コミュニティからの批判的検討および助言を受けることにより、データの精度および有用性の向上を図る方針である。