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連載エッセイ “We shall overcome” (7)
コロナ禍 in 東北 木田直子 2020-10-28
夫の転職で、私たち夫婦が神奈川県から山形県の庄内地方に移住して7年経ちました。
コロナ禍、都会と田舎の様子は違います。人口減少が止まらない庄内でソーシャルディスタンスをとるのは簡単。家族単位ではありますが、外食もできたし山や海や公園などレジャーも楽しめました。しかし、東北から絶対に出てはいけない。東北以外の地域からの訪問者と、濃厚接触は許されない。厳しい近隣の目が光っています。「隣組」「村八分」社会の教科書で見た文字を肌で感じます。横浜出身の私にとって驚きの「無言の束縛状況」が3月下旬から、今もずっと続いています。
コンサートも全てキャンセル。コロナ禍で、私が一番初めにしたのは、満開の桜の元、森山直太朗さんの「桜」の演奏。ひとりで弾いて歌って撮って動画をアップしました。映画「おくりびと」の舞台になった馬渡の桜並木をバックに、ハープで弾き語り。お花見ができなかった首都圏の友人知人から喜びの声を頂きました。
次に、夫が、昨年コンサートをした「羽黒の森美術館」で、ふたりで動画を撮ろうと言い出しました。このときほど、夫婦で演奏活動をしていて良かったと思ったことはありません。館長さんからは「ゴールデンウィークは休館なので自由に使ってください」とのお言葉を頂きました。この美術館、古民家を移築したもので響きが良い。スマホで撮って、全く編集なしで聴くに堪えうるCDになるほどです。5日間かけて数曲動画を撮りました。
歌は、Robert Burnsの” Ye banks and braes of Bonny Doon”を入れました。「ドゥーン川のほとりは美しい。花が咲き小鳥たちは囀っている。なのに、わたしは不安と悲しみで胸がいっぱい。この美しい場所で愛する人と過ごしたのに・・・」自然が美しい分、寂しさがこみ上げるこの詞、コロナ禍でとても良く理解できました。川には雪解け水がとうとうと流れ、山は淡い緑色になって桜が咲き鶯が鳴く、ひとりで見ているには余りある美しいここ庄内。いつも遊びに来てくれた友人や家族には、今年は会えない。
話は逸れますが、庄内地方で5月と言えば田植えの時期、美術館の広いお庭の隣は田んぼです。撮影中、トラクターが動き始めるのがつらかった。トラクターが田んぼの逆側に遠ざかり、音が聞こえなくなったのを見計らって撮りました。優雅に演奏しているように見えるかもしれませんが、実は、農家さんとの密かな戦いの末に撮り終えた、その動画はこちらから↓
「The Banks O’ Doon (Ye banks and braes of Bonny Doon)」by Robert Burns
https://youtu.be/IpsG6WxatiA
「Roslin Castle (Air) – Flowers of Edinburgh (Reel) 」Scottish trad. in 18c
https://youtu.be/CqT-NFex9iM
「A Port and The Canaries」both from Straloch Manuscript, 17c Scotland
https://youtu.be/Um9Nzb9DBis
動画を見た人たちから、沢山コメントを頂きました。「コンサートがなくなって人前で演奏する機会がなくなったのは残念だけど、でも、世界の人々にあなたたちの演奏を聞かせることが出来て、とても良かったと思う」と、スコットランド人の友人。確かに、こんな状況でなければ動画を撮るために重い腰をあげることもなかったと思います。人間窮地に追いこまれると行動するものですね。
夏から主人は、東京の古楽ハープ奏者西山まりえさんが始めた、リモートのグループレッスンに参加しています。山形県在住の私たちにとっては有難いことです。コロナ禍でなくとも続けて頂けたら嬉しいです。
私はこれまで主にスコットランド民謡を歌ってきましたが、旅のしづらいコロナ禍で「日本歌曲の弾語りin 田舎の風景」も試みています。私のハープの弾語りを見た日本の方々のコメントから、今は、日本の原風景を背景に日本の歌が聴きたい人が多いのではないか?と感じるからです。少しでもみなさんの癒しになればと思います。
何の心配もなく、みなさんの前でコンサートができる日が早く来ますように。
https://www.youtube.com/watch?v=CMSCrZpo0BI&t=13s
https://www.youtube.com/watch?v=M2i4oimQ9kE&t=19s