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あるば書房   山田 修_(2007/11)

 今私がやっているスコットランドに関する一人出版社「あるば書房」は始めて6年になります。「アルバ」はご存知のようにスコットランドの古名、カタカナでは硬いので、「あるば」とひらがな書きにしました。
 そもそも「あるば書房」を始めようと思ったのは、スコットランド北東に浮かぶオークニー諸島出身の詩人・作家のGeorge Mackay Brown (1921-1996)を紹介したいと思ったからです。そういうわけで、今まで「あるば書房」が出した10点のうち7点がブラウンの作品です。 ブラウンの作品に初めて接したのは、エドウィン・ミュアの『自叙伝』の第一章「ワイア」にひかれて、1978年(昭和53年)メインランドの北にある小さな島ワイア島を訪れたときのことです。メインランドでの本屋でブラウンの第2短編集 A Time to Keep and Other Stories (1969)をたまたま買ったのがきっかけでした。その作品のもつ土くささ、海の匂い、その素朴な語り口にひそむ詩情に富む奥深さにひかれたのでした。
 1988-89年、在外研究でスコットランドのダンディー大学に滞在したとき、私の担当のヒルダ・D・スピア博士から、誰かスコットランドの作家の書誌を作ったらどうかと勧められ、書誌なら根気があれば外国人にもできると思いやってみることにしました。対象の作家をミュアにするかブラウンにするか迷いまし たが、結局ブラウンを選び、さらにブラウンにのめり込むことになりました。驚いたことに、スピア博士はその書誌を、他の人の書いたブラウンについてのエッ セイを前につけて、エドウィン・メレン社から2 度(1991, 2000)も出版できるように取り計らってくれました。感謝感激でした。
 「あるば書房」の10冊目は私がブラウンを知るきっかけとなった『守る時』です。この翻訳はぜひ自分の手でやりたいと思い、一部は大学の紀要に発表しましたが、他のことにかまけてなかなか完成できず、 29年後の今年5月に、やっと出すことができました。それにもかかわらず校正が行き届かず、ミスプリントが散見される体たらくです。あの世に行く前に、訂正版を早く出したいと考えています。
 一人出版社ですから、版権を取ることから印刷屋への手配、校正の手伝い、取次店への納品、確定申告までほとんど一人でやるので、時にはしんどいことがあり ます。本を作るのはお金があればできますが、販売が難しいです。とんとんなら御の字で、毎年持ち出しです。ビジネスというより道楽と思っています。著者なり訳者に半分ほどお買い上げいただくことで、何とか成り立っているのが現状です。ヤフーで「あるば書房」を検索すればホームページが見られますので、いちどお試しください。